■WORKS■
友田多恵子の触覚的な三遠
友田多恵子のペーパー・レリーフは、墨と水との調合により、墨と和紙との接触によって生まれる効果などを考え、墨の色に微妙な変化をつけている。
レリーフは、よく彫刻における革命ともいわれる。直訳すれば浮刻、陽刻である。 また絵画においても、物の厚みや奥行を立体的に表現することも指している。友田は、支持体としている和紙に凹凸、起伏を付与し、独自のレリーフによる造形表現に挑んでいる。
中国では古くから水墨による山水画に三遠ありといわれている。三遠とは平遠・深遠・高遠である。つまり遠というのはひろがりで、平遠は横のひろがり、深遠は深さのひろがり、高遠は高さのひろがりを意味する。
近年、友田は紙の軌跡シリーズや宇宙ー浮遊するものと銘打って和紙と墨による造形表現に腐心している。友田の作品であるペーパーレリーフの魅力のひとつに、触覚的な三遠を見出し、しばしカオスの世界に浮遊している私に気づくことがしばしばである。
坂上義太郎 (前伊丹市立美術館館長)